【声劇】シナリオ「座敷童」】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いつもお世話になっております!
私の朗読作品集は私が朗読する作品を
セレクトした朗読作品集です。
あなたの古銭・記念硬貨、あなたが満足する価格で買い取ります。
不要な古銭・記念硬貨の買い取りならバイセルがおすすめ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
声劇シナリオ「座敷童」。あらすじ・人物設定・配役
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
父母が離婚した沙織は、
母に連れられて、とある町にやって来た。
沙織が小学五年生になった秋の日の事だった。
沙織は、新しい学校に馴染めずに、
一人ぼっちで過ごしていた公園で座敷童と出会うが・・・・・・。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
十二歳。
小学六年生。
少しワガママで寂しがりやで泣き虫な女の子。
母と二人で新聞配達所の寮に住んでいる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
三十代。
夫と離婚し、新聞配達員として沙織を養っている。
男勝りな性格で責任感が強い。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
子供の姿をした妖怪。
十二歳位の少女の姿のまま、永遠に歳をとらない。
長い黒髪が美しい、赤い着物の女の子。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二十八歳。
夫と娘の詩織と一緒に座敷童がいる公園の町に戻ってきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
五歳。
無邪気で人なつっこくて好奇心旺盛でお母さんが大好きな女の子。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
五十歳位。
お母さんがつとめている新聞配達所の所長
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二十五歳位。
公園で子供と遊んでいるママさん。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
二十五歳位。
公園で子供と遊んでいるママさん。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
五~六歳位の女の子。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
五~六歳位の女の子。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ナレーターは、沙織(少女時代)
または沙織(母親時代)と
一人二役で担当する事もできます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1沙織(少女時代)、ナレーター、お母さん、沙織(母親時代)、公園ママA・B
2座敷童、詩織、所長、優子、恵子
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1沙織(少女時代)、沙織(母親時代)
2座敷童、詩織、優子、恵子
3ナレーター、所長、公園ママA・B
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1沙織(少女時代)
2沙織(母親時代)、ナレーター、
3座敷童
4詩織、優子、恵子
5所長、公園ママA・B
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
声劇シナリオ「座敷童」あらすじ・本編。作者QB
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
父母が離婚した沙織は、
母に連れられて、とある町にやって来た。
沙織が小学五年生になった秋の日の事だった。
沙織は、新しい学校に馴染めずに、
一人ぼっちで過ごしていた公園で
座敷童と出会うが・・・・・・。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【国内最速No.1】高性能レンタルサーバーConoHa WING
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「中学校なんて行きたくない!」
お母さん「沙織! 待ちなさい。こんな時間に何処に行くの!」
沙織「待たない! お母さんなんて大嫌い!!」
私はお母さんの静止を振り切った。
そして――
私は新聞配達所の寮を飛び出す。
タッ――。
お母さん「沙織! 待ちなさい!」
お母さんの声が私を追いかけるように放たれる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
けれども――
私はお母さんの叫び声を振り切るように走り続ける。
タッ、タ――
沙織「こんな時間に何処へ行こう・・・・・・」
私は思わず呟いた。
でも――
私の行き先は一つしかないんだ。
座敷童子のいるあの公園だ。
私は闇夜に目を懲らしながら、
公園に向かって一目散に走る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
タッ、タッ、タ――
沙織「私はサヨナラなんかしたくない」
沙織「あの赤い着物の座敷童と――」
私は息を切らせながら、夜の公園へと辿り着いた。
沙織「あっ、座敷童――」
私は夜の公園で足を止めた。
タ――。
赤い着物の座敷童が、
夜の公園に一人でブランコに乗っている。
沙織「座敷童――」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私はブランコに向かってゆっくりと歩く。
沙織「座敷童。会いたかったよ」
座敷童「沙織ちゃん。いらっしゃい」
座敷童はブランコに揺られたまま、私に声をかけてきた。
座敷童「待ってたよ。沙織ちゃん・・・・・・」
沙織「待ってた・・・・・・って」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「座敷童は私が公園に来ることを知ってたの?」
座敷童「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
座敷童は無言のまま頷いたようにブランコを上下させた。
沙織「座敷童・・・・・・」
沙織「そういえば、あの時も、このブランコで――」
私は座敷童を見つめながら、
座敷童と出会った日の事を思い出していた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
小学五年生の秋――。
私の両親は離婚したんだ。
私はお母さんに引き取られた。
そして――
お母さんは私を連れて
縁も所縁もないこの町へと流れ着いたんだ。
女手一つで子供を抱えて
暮らして行くとなると職種は限られる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ましてや、
私たちは見知らぬ土地からやって来たヨソ者だ。
どの町でも・・・・・・
子連れ女のヨソ者には冷たかった。
だから――
お母さんはこの町に着くなり、
この新聞配達所に飛び込んだんだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お母さん「従業員募集か・・・・・・」
お母さんは窓に貼られている
従業員募集の張り紙を見るなり声を漏らした。
だから――
私は思わず不安になって口に出してしまう。
沙織「え? お母さん、また応募するの?」
お母さん「そう。応募してみる。だって――」
母は一呼吸置いて口を開く。
お母さん「だって、お仕事をしなきゃ暮らしていけないでしょ?」
お母さんは毅然とした口調で言い放った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それでも・・・・・・
私はまくしたてるように口にする。
沙織「また行くの?」
お母さん「行かなきゃどうする――」
沙織「どうせまた惨めな思いをするだけじゃない!」
私は抑えてた気持ちを吐き出すように言葉を投げつける。
沙織「おそば屋さん、ラーメン屋さん、旅館にホテル・・・・・・
みんな不合格だったじゃない」
さっきまでの出来事が私の瞼(まぶた)に浮かんでは消えて行く。
そして――
私はお母さんに抗議するように口を開く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「そこまでする必要ある?」
沙織「こんな惨めな思いしてまで行くこと――」
お母さん「どんな惨めな思いをしても働かなきゃ・・・・・・
生きていけないでしょ?」
お母さんは決意を含んだ眼差しで私を見つめた。
だから――
私は思わず息を飲むように出かかった言葉を飲み込んだ。
沙織「・・・・・・うん――」
お母さん「ここで決まらなきゃ今夜は野宿だからね」
お母さんは自分に言い聞かせるように言った。
そして・・・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
お母さんは新聞配達所のドアを開けた。
お母さん「すいません――」
所長「はい。朝刊ですか?夕刊ですか?」
所長さんらしき人が少し驚いたように声を放った。
そして――
お母さんは少し戸惑ったように言葉を濁す。
お母さん「いえ。どちらも――」
所長「あ、どちらもお買い求めになられますか?」
所長さんらしき人は新聞棚から新聞を取り出していく。
所長「えーと・・・・・・朝刊110円、夕刊50円で、160円になります」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
所長さんは右手に持った新聞を二部(にぶ)お母さんに差し出した。
だから、お母さんは間違いを正すように口を開く。
お母さん「いえ。こちらで働かせて欲しいんです」
所長「あ、従業員募集の――」
所長さんは何かに気づいたようにお母さんを見やった。
すると、お母さんは背筋をピンと伸ばして声を出した。
お母さん「はい。秋月と申します。よろしくお願い致します」
所長「と、すると――。そちらのお嬢さんは・・・・・・」
所長さんは私に向かっていきなり視線を投げた。
その時、私は戸惑いながら口ごもってしまった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「あ、あの、私――」
お母さん「娘の沙織です」
お母さんは私の頭を押さえつけるようにして、
私に頭を下げさせた。
そして――
お母さんは私と一緒に頭を下げて挨拶をする。
お母さん「今日から母娘共々お世話になります」
所長「え・・・・・・は、はい。わかりました――」
所長さんはお母さんの気迫に
気圧(けお)されたように私達に会釈した。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こうして――
お母さんはこの日から
新聞配達員として働くようになった。
私はお母さんと一緒に、
この新聞配達所の寮で暮らすようになったんだ。
でも・・・・・・
私はものすごく人見知りなんだ。
だから――
私は転校した学校になかなか馴染めずにいた。
私は学校で友達もできないまま、
この知らない街の公園で一人ぼっちで
過ごすようになっていったんだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「お母さん、今日も遅いなぁ・・・・・・」
私は公園のブランコに
ゆらゆらと揺られていた。
お母さんが仕事を終えて
新聞配達所の寮に帰ってくるのを
待っているんだ。
沙織「お腹空いたなぁ・・・・・・」
私はブランコに揺れながら、
自分のお腹を手で押さえた。
すると――
あァ・・・・・・
何処からともなく、
子守歌が聞こえてきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ・・・・・・」
沙織「誰? 誰が歌っているの?」
私は公園のあちこちに目をやる。
でも――
公園の何処を探しても・・・・・・
沙織「誰もいない――」
夕闇に染まる公園で、私はいつもと同じ一人ぼっちだ。
沙織(誰? 一体、誰なの――)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は寂しさを掻き消すように叫ぶ。
沙織「何処にいるの!」
沙織「誰かいるなら隠れていないで姿を見せて!」
座敷童「ここだよ。ここ――」
沙織「ここ・・・・・・?」
私は聞こえてきた声に目を向けた。
すると――
赤い着物の女の子が、
私の隣のブランコにちょこんと座っていたんだ。
沙織(さっきまで、誰もいなかったのに・・・・・・)
>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は赤い着物の女の子を見て唖然とした。
赤い着物の女の子は、
おかっぱ頭をしていた。
この赤い着物の女の子は
無邪気な笑みを浮かべながら
私を見つめている。
沙織(この子は、一体、誰なんだろう・・・・・・)
私は赤い着物の女の子を見つめて思いを巡らせる。
どうして――
沙織(どうして・・・・・・)
私は不思議そうに、赤い着物の女の子を見つめ返す。
沙織「ねぇ? どうして?」
沙織「どうして、こんな時間に一人でブランコになんかに乗っているの?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
座敷童「・・・・・・・・・・・・」
赤い着物の女の子は何も言わずに、
私に向かって優しく微笑んだ。
沙織(可愛い。赤ちゃんが笑うみたいに可愛い)
私は赤い着物の女の子の笑みに心がときめいた。
沙織(こんなに可愛く笑える子も、
私みたいに・・・・・・一人ぼっちなのかな?)
私は勇気を出して、赤い着物の女の子に声をかける。
沙織「あ、あなたは誰?」
座敷童「私は座敷童。よろしくね」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
座敷童と名乗った
赤い着物の女の子は、私に向かってにっこりと笑った。
私は座敷童に向かって話しかける。
沙織「私、沙織って言うんだ・・・・・・」
私は緊張をかき消すように立て続けに言葉をつないでいく。
沙織「あのね?
私は近くの新聞配達所の寮にお母さんと住んでるんだ」
座敷童「沙織ちゃんて言うんだ」
沙織「うん・・・・・・」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は思いきって喉の奥につかえていた言葉を口にした。
沙織「ねぇ? 座敷童。あなたは何処に住んでいるの?」
座敷童の表情が急に曇った。
そして――
座敷童は伏し目がちに寂しそうに呟いた。
座敷童「私が長い事住んでいたお家が潰され、この公園ができたんだ」
座敷童「だから・・・・・・今は一人でここに住んでるんだよ」
沙織「一人で・・・・・・」
(座敷童って、こんな所に一人で住んでるの!)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は思わず言葉を失ってしまった。
ジャングルジム、シーソー、滑り台、ブランコ、ベンチ・・・・・・
この公園には
雨風をしのげる場所なんて、
何処にもなかった。
沙織(座敷童はどうやって生活をしているのだろう?)
私の心にふとそんな疑問が浮かんだ。
沙織(私だって夜中に一人でおトイレに行くのは恐いのに・・・・・・)
私の瞼に
新聞配達所の暗い廊下の奥にある
トイレが浮かんで来る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織(この子は、この公園で一人ぼっちで夜を明かしているんだ)
私は隣にいる座敷童に視線を投げた。
そしたら――
私は理由もなく悲しくなって・・・・・・
私は思わず目に涙が浮かべてしまったんだ。
沙織「ね、ねぇ・・・・・・」
私の口から言葉が漏れてしまう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「座敷童は一人で寂しくないの?」
座敷童「・・・・・・・・・・・・」
座敷童は黙ったまま、
首を上下に振るようにブランコを動かし始めた。
だから――
私は座敷童より大きくブランコを動かしながら言った。
沙織「ねぇ? 座敷童・・・・・・」
私は何かを打ち明けるように思い切って口を開く。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「私と友達になろう?
一人では寂しくても二人なら楽しくなれるよ」
座敷童「うん」
座敷童は
空のお月様よりも明るい笑顔で
笑った。
その日から――
私は学校から帰ると真っ直ぐに公園に走ったんだ。
私はランドセルを背負ったまま、
公園のシーソーに乗って飛び跳ねて、滑り台を滑り降りては駆け上がり、
ジャングルジムの頂上から、
夕焼けを眺めては月明かりの下でブランコを動かしたんだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そんな・・・・・・
そんな私の側には、いつも赤い着物の座敷童がいた。
あの日で――
あの日で、私は一人ぼっちを卒業したんだ・・・・・・
沙織(それなのに・・・・・・)
それなのにっ・・・・・・!
沙織「それなのに! 今日でお別れなんて嫌だよ! 座敷童!」
私は目に涙を滲ませながら、
隣のブランコの座敷童に訴えた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私が背負ったランドセルが
寒さに震える子犬のように
ガタガタと音を立てて震えている。
座敷童は感情を抑えた声色で私に告げる。
座敷童「沙織ちゃん。今まで有り難う」
座敷童「昨日も言ったけど・・・・・・
大人になると、私は見えなくなるんだよ」
沙織「そんな事・・・・・・イキナリ言われても納得なんてできないよ!!」
沙織「中学生はまだ子供なんだよ! 座敷童――」
座敷童「沙織ちゃん。この公園にあった家が
畑に囲まれていた頃はね。女の子は、みんな・・・・・」
座敷童が言葉に詰まったように口をつぐむ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そして――
座敷童は私を諭すように言葉を継げた。
座敷童「沙織ちゃん。女の子はね?」
座敷童「沙織ちゃん位の歳になると、
みんなお嫁入りをしていたんだよ」
座敷童の真っ直ぐな瞳が、私に訴えかける。
でも――
私は座敷童の訴えをかき消すように
言葉に感情を込めて言う。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「お願い! 座敷童。これからも私と一緒にいて!」
沙織「私、もうあなたなしじゃ生きていけないの!」
沙織「お願い! 私を・・・・・・もう一人にしないで!」
私は肩を震わせながら座敷童に言った。
沙織「もう――。一人ぼっちは嫌なんだよ。座敷童・・・・・・」
あぁ・・・・・・。
一人ぼっちだった孤独な日々の光景が、
私の脳裏を走馬燈のように駆け巡る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
抑えきれなくなった涙が、
私の瞳から濁流のように溢れてくる。
沙織「お願いだよ・・・・・・」
沙織「ねぇ、座敷童――。これからも、私の側にいてよ」
私は顔を涙でくしゃくしゃにしながら、座敷童に訴えた。
だけども――
座敷童は穏やかな表情のまま、
私を諭すように告げてきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
座敷童「沙織ちゃん。私はいつも沙織ちゃんの側にいるよ。
座敷童「ただ、私が見えなくなるだけだよ」
沙織「え? 私が見えなくなる・・・・・・って?」
座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ」
座敷童は
ブランコに揺られたまま、
子守歌を歌い出した。
この公園で
座敷童と初めて出会った時に聞こえた
あの子守歌だ。
座敷童「私はいつでも沙織ちゃんの側にいるからね・・・・・・」
あァ――――。
座敷童の清流のように
透き通った声が
子守歌の中に消えていく。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「座敷童・・・・・・!」
私は思わずブランコから立ち上がった。
そして・・・・・・
私は無我夢中で座敷童の姿を探した。
でも――
座敷童の姿は公園の何処にもなかった。
ただ――
私の隣の無人のブランコだけが、
誰かが乗っているように
大きく大きく揺れ動いていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織「座敷童――――――!」
私はありったけの大きな声で座敷童を求めて叫んだ。
しかし――
いくら座敷童を呼び求めても・・・・・・
私の声は無人の夜の公園の静寂の闇に
吸い込まれるように消えていくだけだった。
これが――
私が座敷童を見た最後の景色だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
詩織「ねんねんころりよ。おころりよ」
沙織「詩織? その歌、何処で覚えたの?」
私は公園のブランコに揺られながら、
娘の詩織に問いかけた。
私の初めての娘である詩織は、
今日で五歳になった。
詩織は私の膝の上で無邪気にはしゃぎながら、
隣のブランコを指差して口を開いた。
詩織「お母さん。この子が歌っているお歌だよ」
沙織「この子?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私は隣のブランコに目をやった。
私の隣のブランコは誰もいないのに、
陽炎のようにゆらゆらと揺れている。
詩織「お母さん。この赤い服の子だよ」
詩織は無人のブランコを指差しながら口を開く。
詩織「ねぇ? お母さんも聞こえるでしょう?」
詩織「ねんねんころりよ――って」
沙織「座敷・・・・・・童・・・・・・」
あァ――――。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
私の胸底から、
あの日の懐かしさが・・・・・・
――今、怒濤のようにあふれ出していく。
沙織(座敷童だ――)
あァ――。
私の目の前が・・・・・・
十数年前のあの公園の景色で埋め尽くされていく。
私の目の前には何もない。
ただ――
私の隣のブランコが風もないのに、
ゆらゆらと揺れているだけだ。
今の私の心のように――
溢れ出してくる涙のように・・・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あァ――。
ブランコは風もないのに、
ゆらゆらと揺れているのだ。
沙織「ありがとう・・・・・・」
私はやっとの事で精一杯の声を振り絞った。
そして――
娘の詩織は心配そうに私を見上げてくる。
詩織「お母さん。どうしたの? ねぇ・・・・・・お母さん?」
沙織「何でもない。詩織・・・・・・何でもないのよ」
私は揺れ動く心と
それにつられて動揺する詩織を
落ち着かせる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
でも――
いくら心を落ち着かせても・・・・・・
私の隣で無人のブランコは、
ますます大きく揺れ動く。
公園にいるお母さん達は・・・・・・
私の隣で揺れ動く無人のブランコを
不思議そうに見つめている。
公園ママA「ちょっと? あのブランコおかしくない?」
公園ママB「あのブランコだけが、ナンであんなに揺れてるの?」
お母さん達の騒ぎ声が公園に満ちていく。
だけども――
子供達はお母さん達に抱かれながら、
ブランコを見つめて無邪気に笑っている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
優子「こんにちわー。私、優子って言うんだよー」
恵子「私は、恵子ー! ねんねんころりーよ」
あァ――。
子供達は座敷童のように、
無邪気な笑みを浮かべては、
無人のブランコに語りかけている。
沙織「座敷童・・・・・・」
私の口から呟きが漏れた。
そして――
詩織が私の服を引っ張りながら、
急かすように聞いてくる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
詩織「ねぇねぇ、お母さん? あの赤い服の子がね・・・・・」
詩織は隣の無人のブランコを指差しながらこう言った。
座敷童「沙織ちゃん。私は――、いつでも沙織ちゃんの側にいたよ」
座敷童「ずっとずっと・・・・・沙織ちゃんを見守っていたよ――」
詩織「――だって。ねぇ? お母さん。沙織ちゃんて・・・・・・誰?」
私の目からは
涙が津波のように流れて来て
止まらなかった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
それでも――
私は言葉を振り絞ろうとする。
沙織「沙織は私の――」
沙織(私の――――、あなたのお母さんの名前だよ・・・・・・)
沙織「・・・・・・詩織」
私は言い出せなかった言葉を心の中で呟いた。
詩織「お母さん?」
詩織は私を心配そうにのぞき込む。
沙織(私にも家族ができたよ・・・・・・)
私は姿の見えない座敷童に向かって
声を出さずに語りかけていく。
沙織(こんな私を・・・・・・心配してくれる家族ができたんだよ――)
沙織「――座敷童」
私の目から
涙と言葉とが同時に
こぼれおちた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
詩織「お母・・・・・・さん?」
詩織が私の涙に向かって手を伸ばす。
沙織(心配してくれて・・・・・・)
沙織「ありがとう。詩織――」
私は詩織の手をしっかりと握りしめた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織(もう――、一人ぼっちなんかじゃない・・・・・・)
私の心の中で・・・・・・
公園で一人ぼっちだった
あの日の私が口を開く。
沙織「ありがとう。座敷童――」
あァ――――。
無人のブランコは凧のように、
勢いよく空に舞い上る。
あァ・・・・・・。
無人のブランコが空に舞う。
誰もいないブランコは、
まるで誰かに操られている
鯉のぼりのように
空を泳いでいる
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
沙織(座敷・・・・・・)
詩織「座敷童――」
詩織は私が言いかけた言葉を口ずさんだ。
そして――
あの日の座敷童のように・・・・・・
私達は赤ちゃんのような笑顔で口ずさむ。
沙織「ねんねんころりよ」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
詩織「おころりよ」
詩織はこの公園で十数年前に出会った
座敷童のように優しく微笑んだ。
あの日の――
座敷童の笑顔で優しく微笑んでいた。
座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ」
☆おしまい
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
↓声優、ゲーム、アニメ、イラストなどを学びたい方必見!「アミューズメントメディア総合学院」はコチラから↓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
夢を夢で終わらせない!アミューズメントメディア総合学院
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【現役小説家が絶賛する!夢を叶える学校】『アミューズメントメディア総合学院(AMG)』━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━