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【声劇】シナリオ「座敷童」

更新日:

【声劇】シナリオ「座敷童」】

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声劇シナリオ「座敷童」。あらすじ・人物設定・配役

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☆あらすじ

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父母が離婚した沙織は、
母に連れられて、とある町にやって来た。

沙織が小学五年生になった秋の日の事だった。

沙織は、新しい学校に馴染めずに、
一人ぼっちで過ごしていた公園で座敷童と出会うが・・・・・・。

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☆人物設定・配役☆

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☆登場人物 1人~3人(声劇時)☆

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☆1 沙織(さおりー少女時代)

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十二歳。
小学六年生。
少しワガママで寂しがりやで泣き虫な女の子。

母と二人で新聞配達所の寮に住んでいる。

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☆2 お母さん

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三十代。
夫と離婚し、新聞配達員として沙織を養っている。
男勝りな性格で責任感が強い。

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☆3 座敷童(ざしきわらし)

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子供の姿をした妖怪。
十二歳位の少女の姿のまま、永遠に歳をとらない。
長い黒髪が美しい、赤い着物の女の子。

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☆4 沙織(さおりー母親時代)

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二十八歳。
夫と娘の詩織と一緒に座敷童がいる公園の町に戻ってきた。

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☆5 詩織(しおり)

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五歳。
無邪気で人なつっこくて好奇心旺盛でお母さんが大好きな女の子。

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☆6 所長

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五十歳位。
お母さんがつとめている新聞配達所の所長

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☆7 公園ママA

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二十五歳位。
公園で子供と遊んでいるママさん。

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☆8 公園ママB

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二十五歳位。
公園で子供と遊んでいるママさん。

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☆9 優子

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五~六歳位の女の子。

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☆10 恵子

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五~六歳位の女の子。

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☆10+1 ナレーター

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ナレーターは、沙織(少女時代)
または沙織(母親時代)と
一人二役で担当する事もできます。

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☆配役設定

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☆2人で声劇

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1沙織(少女時代)、ナレーター、お母さん、沙織(母親時代)、公園ママA・B

2座敷童、詩織、所長、優子、恵子

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☆3人で声劇

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1沙織(少女時代)、沙織(母親時代)

2座敷童、詩織、優子、恵子

3ナレーター、所長、公園ママA・B

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☆5人で声劇

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1沙織(少女時代)

2沙織(母親時代)、ナレーター、

3座敷童

4詩織、優子、恵子

5所長、公園ママA・B

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声劇シナリオ「座敷童」あらすじ・本編。作者QB

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☆声劇シナリオ「座敷童」あらすじ

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父母が離婚した沙織は、
母に連れられて、とある町にやって来た。

沙織が小学五年生になった秋の日の事だった。

沙織は、新しい学校に馴染めずに、
一人ぼっちで過ごしていた公園で
座敷童と出会うが・・・・・・。

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☆声劇シナリオ「座敷童」本編

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沙織「中学校なんて行きたくない!」

お母さん「沙織! 待ちなさい。こんな時間に何処に行くの!」

沙織「待たない! お母さんなんて大嫌い!!」

私はお母さんの静止を振り切った。

そして――
私は新聞配達所の寮を飛び出す。

タッ――。

お母さん「沙織! 待ちなさい!」

お母さんの声が私を追いかけるように放たれる。

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けれども――

私はお母さんの叫び声を振り切るように走り続ける。

タッ、タ――

沙織「こんな時間に何処へ行こう・・・・・・」

私は思わず呟いた。
 
でも――

私の行き先は一つしかないんだ。
座敷童子のいるあの公園だ。

私は闇夜に目を懲らしながら、
公園に向かって一目散に走る。

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タッ、タッ、タ――

沙織「私はサヨナラなんかしたくない」

沙織「あの赤い着物の座敷童と――」

私は息を切らせながら、夜の公園へと辿り着いた。

沙織「あっ、座敷童――」

私は夜の公園で足を止めた。

タ――。

赤い着物の座敷童が、
夜の公園に一人でブランコに乗っている。

沙織「座敷童――」

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私はブランコに向かってゆっくりと歩く。

沙織「座敷童。会いたかったよ」

座敷童「沙織ちゃん。いらっしゃい」

座敷童はブランコに揺られたまま、私に声をかけてきた。

座敷童「待ってたよ。沙織ちゃん・・・・・・」

沙織「待ってた・・・・・・って」

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沙織「座敷童は私が公園に来ることを知ってたの?」

座敷童「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

座敷童は無言のまま頷いたようにブランコを上下させた。

沙織「座敷童・・・・・・」

沙織「そういえば、あの時も、このブランコで――」

私は座敷童を見つめながら、
座敷童と出会った日の事を思い出していた。

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☆回想

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小学五年生の秋――。
私の両親は離婚したんだ。
私はお母さんに引き取られた。

そして――

お母さんは私を連れて
縁も所縁もないこの町へと流れ着いたんだ。

女手一つで子供を抱えて
暮らして行くとなると職種は限られる。

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ましてや、
私たちは見知らぬ土地からやって来たヨソ者だ。

どの町でも・・・・・・
子連れ女のヨソ者には冷たかった。
 
だから――

お母さんはこの町に着くなり、
この新聞配達所に飛び込んだんだ。

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お母さん「従業員募集か・・・・・・」

お母さんは窓に貼られている
従業員募集の張り紙を見るなり声を漏らした。

だから――

私は思わず不安になって口に出してしまう。

沙織「え? お母さん、また応募するの?」

お母さん「そう。応募してみる。だって――」

母は一呼吸置いて口を開く。

お母さん「だって、お仕事をしなきゃ暮らしていけないでしょ?」

お母さんは毅然とした口調で言い放った。

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それでも・・・・・・

私はまくしたてるように口にする。

沙織「また行くの?」

お母さん「行かなきゃどうする――」 

沙織「どうせまた惨めな思いをするだけじゃない!」

私は抑えてた気持ちを吐き出すように言葉を投げつける。

沙織「おそば屋さん、ラーメン屋さん、旅館にホテル・・・・・・
   みんな不合格だったじゃない」

さっきまでの出来事が私の瞼(まぶた)に浮かんでは消えて行く。

そして――
私はお母さんに抗議するように口を開く。

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沙織「そこまでする必要ある?」 

沙織「こんな惨めな思いしてまで行くこと――」

お母さん「どんな惨めな思いをしても働かなきゃ・・・・・・
     生きていけないでしょ?」

お母さんは決意を含んだ眼差しで私を見つめた。

だから――

私は思わず息を飲むように出かかった言葉を飲み込んだ。

沙織「・・・・・・うん――」

お母さん「ここで決まらなきゃ今夜は野宿だからね」

お母さんは自分に言い聞かせるように言った。

そして・・・・・・

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お母さんは新聞配達所のドアを開けた。

お母さん「すいません――」

所長「はい。朝刊ですか?夕刊ですか?」

所長さんらしき人が少し驚いたように声を放った。

そして――

お母さんは少し戸惑ったように言葉を濁す。

お母さん「いえ。どちらも――」

所長「あ、どちらもお買い求めになられますか?」

所長さんらしき人は新聞棚から新聞を取り出していく。

所長「えーと・・・・・・朝刊110円、夕刊50円で、160円になります」

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所長さんは右手に持った新聞を二部(にぶ)お母さんに差し出した。
だから、お母さんは間違いを正すように口を開く。

お母さん「いえ。こちらで働かせて欲しいんです」

所長「あ、従業員募集の――」

所長さんは何かに気づいたようにお母さんを見やった。
すると、お母さんは背筋をピンと伸ばして声を出した。

お母さん「はい。秋月と申します。よろしくお願い致します」

所長「と、すると――。そちらのお嬢さんは・・・・・・」

所長さんは私に向かっていきなり視線を投げた。
その時、私は戸惑いながら口ごもってしまった。

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沙織「あ、あの、私――」

お母さん「娘の沙織です」

お母さんは私の頭を押さえつけるようにして、
私に頭を下げさせた。

そして――

お母さんは私と一緒に頭を下げて挨拶をする。

お母さん「今日から母娘共々お世話になります」

所長「え・・・・・・は、はい。わかりました――」

所長さんはお母さんの気迫に
気圧(けお)されたように私達に会釈した。

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☆場面転換

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こうして――

お母さんはこの日から
新聞配達員として働くようになった。

私はお母さんと一緒に、
この新聞配達所の寮で暮らすようになったんだ。

でも・・・・・・

私はものすごく人見知りなんだ。

だから――

私は転校した学校になかなか馴染めずにいた。

私は学校で友達もできないまま、
この知らない街の公園で一人ぼっちで
過ごすようになっていったんだ。

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沙織「お母さん、今日も遅いなぁ・・・・・・」

私は公園のブランコに
ゆらゆらと揺られていた。

お母さんが仕事を終えて
新聞配達所の寮に帰ってくるのを
待っているんだ。
 
沙織「お腹空いたなぁ・・・・・・」

私はブランコに揺れながら、
自分のお腹を手で押さえた。

すると――

あァ・・・・・・

何処からともなく、
子守歌が聞こえてきた。

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座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ・・・・・・」

沙織「誰? 誰が歌っているの?」

私は公園のあちこちに目をやる。

でも――

公園の何処を探しても・・・・・・

沙織「誰もいない――」

夕闇に染まる公園で、私はいつもと同じ一人ぼっちだ。

沙織(誰? 一体、誰なの――)

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私は寂しさを掻き消すように叫ぶ。

沙織「何処にいるの!」

沙織「誰かいるなら隠れていないで姿を見せて!」

座敷童「ここだよ。ここ――」

沙織「ここ・・・・・・?」

私は聞こえてきた声に目を向けた。

すると――

赤い着物の女の子が、
私の隣のブランコにちょこんと座っていたんだ。

沙織(さっきまで、誰もいなかったのに・・・・・・)
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私は赤い着物の女の子を見て唖然とした。

赤い着物の女の子は、
おかっぱ頭をしていた。
 
この赤い着物の女の子は
無邪気な笑みを浮かべながら
私を見つめている。

沙織(この子は、一体、誰なんだろう・・・・・・)

私は赤い着物の女の子を見つめて思いを巡らせる。

どうして――

沙織(どうして・・・・・・)

私は不思議そうに、赤い着物の女の子を見つめ返す。

沙織「ねぇ? どうして?」
   
沙織「どうして、こんな時間に一人でブランコになんかに乗っているの?」

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座敷童「・・・・・・・・・・・・」

赤い着物の女の子は何も言わずに、
私に向かって優しく微笑んだ。

沙織(可愛い。赤ちゃんが笑うみたいに可愛い)

私は赤い着物の女の子の笑みに心がときめいた。

沙織(こんなに可愛く笑える子も、
   私みたいに・・・・・・一人ぼっちなのかな?)

私は勇気を出して、赤い着物の女の子に声をかける。

沙織「あ、あなたは誰?」

座敷童「私は座敷童。よろしくね」

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座敷童と名乗った
赤い着物の女の子は、私に向かってにっこりと笑った。

私は座敷童に向かって話しかける。

沙織「私、沙織って言うんだ・・・・・・」

私は緊張をかき消すように立て続けに言葉をつないでいく。

沙織「あのね? 
   私は近くの新聞配達所の寮にお母さんと住んでるんだ」

座敷童「沙織ちゃんて言うんだ」

沙織「うん・・・・・・」

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私は思いきって喉の奥につかえていた言葉を口にした。

沙織「ねぇ? 座敷童。あなたは何処に住んでいるの?」

座敷童の表情が急に曇った。

そして――

座敷童は伏し目がちに寂しそうに呟いた。

座敷童「私が長い事住んでいたお家が潰され、この公園ができたんだ」

座敷童「だから・・・・・・今は一人でここに住んでるんだよ」

沙織「一人で・・・・・・」

(座敷童って、こんな所に一人で住んでるの!)

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私は思わず言葉を失ってしまった。

ジャングルジム、シーソー、滑り台、ブランコ、ベンチ・・・・・・

この公園には
雨風をしのげる場所なんて、
何処にもなかった。

沙織(座敷童はどうやって生活をしているのだろう?)

私の心にふとそんな疑問が浮かんだ。

沙織(私だって夜中に一人でおトイレに行くのは恐いのに・・・・・・)

私の瞼に
新聞配達所の暗い廊下の奥にある
トイレが浮かんで来る。

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沙織(この子は、この公園で一人ぼっちで夜を明かしているんだ)

私は隣にいる座敷童に視線を投げた。

そしたら――

私は理由もなく悲しくなって・・・・・・
私は思わず目に涙が浮かべてしまったんだ。

沙織「ね、ねぇ・・・・・・」

私の口から言葉が漏れてしまう。

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沙織「座敷童は一人で寂しくないの?」

座敷童「・・・・・・・・・・・・」

座敷童は黙ったまま、
首を上下に振るようにブランコを動かし始めた。

だから――

私は座敷童より大きくブランコを動かしながら言った。

沙織「ねぇ? 座敷童・・・・・・」

私は何かを打ち明けるように思い切って口を開く。

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沙織「私と友達になろう? 
   一人では寂しくても二人なら楽しくなれるよ」

座敷童「うん」

座敷童は
空のお月様よりも明るい笑顔で
笑った。

その日から――

私は学校から帰ると真っ直ぐに公園に走ったんだ。

私はランドセルを背負ったまま、
公園のシーソーに乗って飛び跳ねて、滑り台を滑り降りては駆け上がり、
ジャングルジムの頂上から、
夕焼けを眺めては月明かりの下でブランコを動かしたんだ。

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☆回想終了

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そんな・・・・・・

そんな私の側には、いつも赤い着物の座敷童がいた。

あの日で――

あの日で、私は一人ぼっちを卒業したんだ・・・・・・

沙織(それなのに・・・・・・)

それなのにっ・・・・・・!

沙織「それなのに! 今日でお別れなんて嫌だよ! 座敷童!」

私は目に涙を滲ませながら、
隣のブランコの座敷童に訴えた。

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私が背負ったランドセルが
寒さに震える子犬のように
ガタガタと音を立てて震えている。

座敷童は感情を抑えた声色で私に告げる。

座敷童「沙織ちゃん。今まで有り難う」

座敷童「昨日も言ったけど・・・・・・
    大人になると、私は見えなくなるんだよ」

沙織「そんな事・・・・・・イキナリ言われても納得なんてできないよ!!」 

沙織「中学生はまだ子供なんだよ! 座敷童――」

座敷童「沙織ちゃん。この公園にあった家が
    畑に囲まれていた頃はね。女の子は、みんな・・・・・」

座敷童が言葉に詰まったように口をつぐむ。

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そして――

座敷童は私を諭すように言葉を継げた。

座敷童「沙織ちゃん。女の子はね?」

座敷童「沙織ちゃん位の歳になると、
    みんなお嫁入りをしていたんだよ」

座敷童の真っ直ぐな瞳が、私に訴えかける。

でも――

私は座敷童の訴えをかき消すように
言葉に感情を込めて言う。

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沙織「お願い! 座敷童。これからも私と一緒にいて!」 

沙織「私、もうあなたなしじゃ生きていけないの!」 

沙織「お願い! 私を・・・・・・もう一人にしないで!」

私は肩を震わせながら座敷童に言った。

沙織「もう――。一人ぼっちは嫌なんだよ。座敷童・・・・・・」

あぁ・・・・・・。

一人ぼっちだった孤独な日々の光景が、
私の脳裏を走馬燈のように駆け巡る。

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抑えきれなくなった涙が、
私の瞳から濁流のように溢れてくる。

沙織「お願いだよ・・・・・・」

沙織「ねぇ、座敷童――。これからも、私の側にいてよ」

私は顔を涙でくしゃくしゃにしながら、座敷童に訴えた。

だけども――

座敷童は穏やかな表情のまま、
私を諭すように告げてきた。

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座敷童「沙織ちゃん。私はいつも沙織ちゃんの側にいるよ。

座敷童「ただ、私が見えなくなるだけだよ」

沙織「え? 私が見えなくなる・・・・・・って?」

座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ」

座敷童は
ブランコに揺られたまま、
子守歌を歌い出した。

この公園で
座敷童と初めて出会った時に聞こえた
あの子守歌だ。

座敷童「私はいつでも沙織ちゃんの側にいるからね・・・・・・」

あァ――――。

座敷童の清流のように
透き通った声が
子守歌の中に消えていく。

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沙織「座敷童・・・・・・!」

私は思わずブランコから立ち上がった。

そして・・・・・・

私は無我夢中で座敷童の姿を探した。

でも――

座敷童の姿は公園の何処にもなかった。

ただ――

私の隣の無人のブランコだけが、
誰かが乗っているように
大きく大きく揺れ動いていた。

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沙織「座敷童――――――!」

私はありったけの大きな声で座敷童を求めて叫んだ。

しかし――

いくら座敷童を呼び求めても・・・・・・

私の声は無人の夜の公園の静寂の闇に
吸い込まれるように消えていくだけだった。

これが――

私が座敷童を見た最後の景色だった。

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☆場面転換

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詩織「ねんねんころりよ。おころりよ」

沙織「詩織? その歌、何処で覚えたの?」

私は公園のブランコに揺られながら、
娘の詩織に問いかけた。

私の初めての娘である詩織は、
今日で五歳になった。
 
詩織は私の膝の上で無邪気にはしゃぎながら、
隣のブランコを指差して口を開いた。

詩織「お母さん。この子が歌っているお歌だよ」

沙織「この子?」

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私は隣のブランコに目をやった。

私の隣のブランコは誰もいないのに、
陽炎のようにゆらゆらと揺れている。

詩織「お母さん。この赤い服の子だよ」

詩織は無人のブランコを指差しながら口を開く。

詩織「ねぇ? お母さんも聞こえるでしょう?」 

詩織「ねんねんころりよ――って」

沙織「座敷・・・・・・童・・・・・・」

あァ――――。

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私の胸底から、
あの日の懐かしさが・・・・・・
――今、怒濤のようにあふれ出していく。

沙織(座敷童だ――)

あァ――。

私の目の前が・・・・・・
十数年前のあの公園の景色で埋め尽くされていく。

私の目の前には何もない。

ただ――

私の隣のブランコが風もないのに、
ゆらゆらと揺れているだけだ。

今の私の心のように――
溢れ出してくる涙のように・・・・・・

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あァ――。

ブランコは風もないのに、
ゆらゆらと揺れているのだ。

沙織「ありがとう・・・・・・」

私はやっとの事で精一杯の声を振り絞った。

そして――

娘の詩織は心配そうに私を見上げてくる。

詩織「お母さん。どうしたの? ねぇ・・・・・・お母さん?」

沙織「何でもない。詩織・・・・・・何でもないのよ」

私は揺れ動く心と
それにつられて動揺する詩織を
落ち着かせる。

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でも――

いくら心を落ち着かせても・・・・・・
私の隣で無人のブランコは、
ますます大きく揺れ動く。

公園にいるお母さん達は・・・・・・
私の隣で揺れ動く無人のブランコを
不思議そうに見つめている。

公園ママA「ちょっと? あのブランコおかしくない?」

公園ママB「あのブランコだけが、ナンであんなに揺れてるの?」

お母さん達の騒ぎ声が公園に満ちていく。

だけども――

子供達はお母さん達に抱かれながら、
ブランコを見つめて無邪気に笑っている。

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優子「こんにちわー。私、優子って言うんだよー」

恵子「私は、恵子ー! ねんねんころりーよ」

あァ――。

子供達は座敷童のように、
無邪気な笑みを浮かべては、
無人のブランコに語りかけている。

沙織「座敷童・・・・・・」

私の口から呟きが漏れた。

そして――

詩織が私の服を引っ張りながら、
急かすように聞いてくる。

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詩織「ねぇねぇ、お母さん? あの赤い服の子がね・・・・・」
 
詩織は隣の無人のブランコを指差しながらこう言った。

座敷童「沙織ちゃん。私は――、いつでも沙織ちゃんの側にいたよ」

座敷童「ずっとずっと・・・・・沙織ちゃんを見守っていたよ――」

詩織「――だって。ねぇ? お母さん。沙織ちゃんて・・・・・・誰?」

私の目からは
涙が津波のように流れて来て
止まらなかった。

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それでも――

私は言葉を振り絞ろうとする。

沙織「沙織は私の――」

沙織(私の――――、あなたのお母さんの名前だよ・・・・・・)

沙織「・・・・・・詩織」

私は言い出せなかった言葉を心の中で呟いた。

詩織「お母さん?」

詩織は私を心配そうにのぞき込む。

沙織(私にも家族ができたよ・・・・・・)

私は姿の見えない座敷童に向かって
声を出さずに語りかけていく。

沙織(こんな私を・・・・・・心配してくれる家族ができたんだよ――)

沙織「――座敷童」

私の目から
涙と言葉とが同時に
こぼれおちた。

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詩織「お母・・・・・・さん?」

詩織が私の涙に向かって手を伸ばす。

沙織(心配してくれて・・・・・・)

沙織「ありがとう。詩織――」

私は詩織の手をしっかりと握りしめた。

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沙織(もう――、一人ぼっちなんかじゃない・・・・・・)

私の心の中で・・・・・・
公園で一人ぼっちだった
あの日の私が口を開く。

沙織「ありがとう。座敷童――」

あァ――――。

無人のブランコは凧のように、
勢いよく空に舞い上る。

あァ・・・・・・。
無人のブランコが空に舞う。

誰もいないブランコは、
まるで誰かに操られている
鯉のぼりのように
空を泳いでいる

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沙織(座敷・・・・・・)

詩織「座敷童――」

詩織は私が言いかけた言葉を口ずさんだ。

そして――

あの日の座敷童のように・・・・・・
私達は赤ちゃんのような笑顔で口ずさむ。

沙織「ねんねんころりよ」

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詩織「おころりよ」

詩織はこの公園で十数年前に出会った
座敷童のように優しく微笑んだ。

あの日の――
座敷童の笑顔で優しく微笑んでいた。

座敷童「ねんねんころりよ。おころりよ」

☆おしまい
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